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漁業の記録をスマホで管理!現場の声をもとに開発した漁業者向けデジタルツールとは

漁業で最も信頼できるスキル「勘と経験」を、形にする漁業者向けデジタルツール『MarineManager +reC.』。アナログな世界とデジタルが描く、漁業の未来とは?日本事務器の和泉雅博さん、増元理名さんに開発経緯と漁業者への想いを伺った。

現場を訪れ、取材を繰り返し
漁業者目線でサービスを開発

―漁業者向けサービス「MarineManager +reC.」( 以下、「+reC.」)はどのようにして生まれたのでしょうか?

<和泉>
これまでは漁協の業務効率化を中心に行っており、その先にある漁業の課題までは把握できていなかったんです。

<増元>
水産の現場は課題も必要な情報も幅広く、同じ地区でも隣の漁協とは文化が違うことも稀ではありません。そこで私たちは、利用者視点の課題やニーズを捉えてゼロから開発する「デザイン思考」を取り入れることにしたのです。

まずは、漁師さんたちの悩みを知るために漁業の現場へ通って、観察や話を聞かせてもらうことから始めました。そのなかで、多くの漁業者がこまめに自分用のメモを取っていることに気づいたんです。

些細なメモでも、漁師の「勘と経験」が詰まった貴重な記録。これを他の漁業者にも共有することで漁協全体の効率化ばかりか担い手育成にも役立つのではないか。そうして生まれたのが「+reC.」です。

―現場の声を形にしたサービスなんですね。具体的にはどのような特徴があるのですか?

<和泉>
新しいアプリとかサービスってなかなか手を付けられないというか、億劫になることって
多いと思うんです。こんな機能があってこんなに作業が楽になりますって言われても、実際には初期設定すら一苦労ということがよくありますよね。ましてや、知らない言葉があったりするとせっかく出てきたやる気も一気になくなってしまいます。

そこで「+reC.」は最初につまずかないように、直感的に操作できるインターフェース(操作画面)にしました。使いたい機能をすぐ開けるようにボタンの数は最小限に留め、大きさや配置も工夫しました。記録も「ペッペッ」と簡単に入力できるような仕様にしました。

<増元>
私はIT分野の経験がなかったこともあり、入社当初は、水産業×ITというと「かっこいいけど、何ができるのかわからず、自分ごと化しにくい」という印象を持っていました。また、水産業は登場人物が多く、うまくそれぞれが繋がっていない・遠い印象もあり、共通言語のような立ち位置になれないだろうか? と考え、「+reC.」では、デジタルに対する難しそうな印象・敷居を下げ、次世代からベテランまで幅広い世代に親しみやすく、自分自身でデジタルを進めていける「ワクワク感」、これらを実現する「ポップな世界観」にこだわりました。

<和泉>
こうして、使いやすさと親しみやすいデザインに仕上がりましたが、漁業は現場ごとに課題も欲しい情報も多様なので、「すべての漁業の現場に対応できるサービス」を提供することは、難易度が高いと考えました。

<増元>
なので「+reC.」を導入いただく場合は、実際に使う漁協さん・漁業者さんを訪れて、漁業のスタイルや魚種、海の状況などに加え、「何を・どのようにして記録として残すか」「どんな未来を目指したいのか」を伺い、特有のカスタム機能により記録情報を最適化していきます。

<和泉>
例えば、「ちょいメモ」機能は現場の声を基に新規機能として取り入れたものです。自分用の感覚的なメモをすぐに取れる機能が欲しいとリクエストを受けて、記録ボタンとは別に、ホーム画面のトップにメモ機能を配置しました。

<増元>
実際に現場に触れ、漁業を教えてもらう中、漁業者さんや、それを支える組合職員さんの努力に感銘を受け、多くの課題があると同時に、歴史が長く、日本ならではの特色の中で、たくさんの魅力があり、明るい面も継続して守っていきたい、繋げていきたいと感じました。そのため、利用者の声を聞いて一緒に進みながら、変化し続けるのが「+reC.」の特徴であり、大切にしているところです。

デジタルを使って全部変えていこうとは思っていません。デジタルと人がまじりあうことで初めて課題に対応できると考えています。水産の現場は同じ地域でも場所が違えば、言葉もルールも違う。そんな現場の声を「教えてもらう」ことから始めています。実際、運用を始めると漁師さんたちの方が納得しているようです。(和泉)

 

 

勘と経験がデジタルと交わり
よりよい未来を共に創る


―実際に利用している漁業者さんの反応はいかがですか?

<増元>
「最初はめんどくさいと思っていたけど使い始めると簡単で便利だった」といった、評価をいただいております。

<和泉>
記録を家に帰らなくてもその場で見返すことができ、グラフ変化でわかりやすいので、仲間同士で漁を振り返る機会が増えたという声もありましたね。

<増元>
作業中の記録データを共有することで、海上での水揚げの状況がリアルタイムでわかるので、荷受けの効率化や、漁協がトラックの事前準備ができ、魚の鮮度を保ち価格の安定に繋がったと漁協の職員さんから報告を受けました。また、買人さんにとっては早い段階で買う機会を知ることができるなど、様々な方面から反響をいただいております。

―漁業者のみならず、漁協の職員、流通業者に至るまで様々なところにも影響しているのですね。最後に「+reC.」の描く漁業の未来をお聞かせください。

<和泉>
漁師にとって「勘と経験」が、最も信じられる情報であることは今後も変わらないでしょう。だからこそ、記録として残していくことは、新規参入者や担い手たちの経験不足を補い、漁業を生業とする助けになるはずです。さらに、蓄積したデータがAIやIoT技術と組み合わさることで、漁業はより効率的で収益性の高い産業になっていくはずです。

<増元>
私たちは漁業は一生勉強の身です。それでも、漁業者一人ひとりの考えに寄り添い、デジタルでサポートをすることで、共に漁業を次世代へ繋いでいくことが私たちの目標です。

「今よりも、もっとずっと良い未来へ向けて」みなさんの漁業を教えてください!
 

 

「MarineManager +reC.」の
3つのメリット

Merit1

パッと記録&振り返り

漁師が日頃書いているメモをスマホに1度書くだけ!手書きと異なり清書も付箋紙も必要なし。船の上でも家でも思いついたらどこでも入力ができる。1年前の作業やその時の状況といった知りたい情報をいつでも引き出せる。

Merit2

仲間との連絡も簡単に

メモした情報を仲間内に共有することで最新の状況を把握!水揚げの状況や出漁の連絡も共有できる。氷や燃料、浜値の情報など組合側からの情報も一括送信が可能。データとして残すことで後継者育成の一助となる。

Merit3

海上の現在地を確認

濃霧でもポイントを完全把握!GPS装置や他の地図アプリに書き写さなくても「 +reC.」1つで漁礁の位置も仕掛けのポイントも完結できる。また組合や家族に情報を共有すれば、1人操業でも安心して漁に出かけられる。
 
CHECK!ロゴに込められた想いとは?

「+reC.」には、「+(ポジティブ)」「Recording( 記録)」「reCatch(再捕獲)」の3つの意味を込めました。ロゴは、漁業(魚)がより良い未来に向かって進む前向きな気持ちが、次世代の担い手(新芽)に繋がり、漁業がいつまでも続くサーキュラエコノミーの実現と、それを創るコミュニティの輪を表現しました。
 

 

プロフィール

日本事務器株式会社
事業戦略本部
バーチカルソリューション企画部
水産関連事業担当 シニアマーケッター

和泉雅博さん

スマート水産の立役者の1人。北海道漁連のシステム開発を皮切りに水産業のIT化に貢献。
水産の現場へおもむき、圧倒的ヒアリングで多くの漁業者の声を形にしてきた。

日本事務器株式会社
事業戦略本部
バーチカルソリューション企画部
水産関連事業担当 マーケッター

増元理名さん

水産庁の水産女子としても活躍。全国各地の漁業の現場へおもむき、漁業とITをつなげる。IT、生産共に未経験だからこそわかるという独自の視点で、漁師の思いを形にする。

問い合わせ

日本事務器
Mail:mmplusrec-support-gr@njc.co.jp
 

 


文/守 雅彦 写真/松尾 夏樹

FISHERY JOURNAL vol.3(2025年冬号)より転載

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