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インタビュー・コラム

【担い手が集まる漁業の働き方講座②】選ばれる職場のつくりかたとは?

漁業の担い手不足は目下の問題であるが、すべての現場が同じ状況というわけでもない。うまくいっている職場には、やはり「魅力」が潜んでいるものだ。新規就業者が集まり、定着する職場つくりのヒントを伺った。

<目次>
1.「背中で覚えろ」は時代遅れ! 正しい情報共有が人を育てる
2.働きやすい3つのアクション
3.できることからはじめよう! 職場改善&担い手獲得のステップ

 

「背中で覚えろ」は時代遅れ!
正しい情報共有が人を育てる

ながさきさんの地元である新潟県のある漁協では、20代から70代までまんべんなく活躍しており、県外出身の新規就業者もいるそうだ。

その理由をながさきさんは「給与体系がしっかりしている点でしょうか? 不漁でも出勤に合わせて給料が出るので、安心感はあると思います」と話す。

また、労務機器の進化も大きいという。「ウインチやクレーンの性能が上がり、作業はだいぶラクになりました。稼働は3分の1に減ったのに、売上は2倍なんて話も聞きますよ」(ながさきさん)。

安定した給与で作業も省力化しているとなれば、十分に職業の選択肢に入るだろう。すると次に取り組むべきは離職を防ぐことだ。

漁業の現場では、研修も無く現場に放り出され、仕事のやり方もわからないまま短期間で辞めてしまう例も多々ある。この解決策として奨励されているのがマニュアルの整備だ。

作業の内容と流れを把握できていれば、新人でも具体的な質問ができるので、教える側の負担も少ない。「背中を見て覚えろ」は過去の美徳。伝える努力をしている職場には人が集まり、一人前へ育っていくものだ。

働きやすい職場をつくる
3つのアクション

1 労働環境の改善

近年ではウィンチや巻き上げ機の性能が向上し、底びき網漁でも2人での作業が可能になっている。また、天気アプリでは風も天気も1時間単位でわかる。

最新ツールの導入は、作業効率を上げ、収益アップに繋がる。特に、船内へのトイレ設置は、若手や女性にも好評とのこと。

また、作業盤の手順をシールで示したり、暗い場所に照明を取り付けるなど、ちょっとした工夫でも働きやすくできる。


2 マニュアルの整備

担い手育成に心血を注いでもすぐに辞めてしまうことも数あり、教育コストは大きな課題。

業務のマニュアル化は教える時間を減らし、ひとりでも仕事の流れや内容を覚えることができる。作成を通じて作業工程の見直しができ、現場の課題が明確になるメリットも。

覚えるスピードが速まることで、新人は仕事にやりがいを見出し、幅広い作業を担当できる人材へ成長することも期待できる。


3 漁師同士の関係値づくり

新人が突然いなくなることはどの業界でも見られるが、特に狭い船内で作業をする漁業現場では会話がしづらく、孤立しやすい。

こうした状況を防ぐには、朝礼や定期的な会議を設け、意見交換の場をつくることが必要だ。出席者には手当を支給するなど、参加しやすくする工夫も有効。

また、作業中に叱られた際などのフォローアップ担当者をつけ、新人が孤立しないメンタルケアも大切だ。

できることからはじめよう!
職場改善&担い手獲得のステップ


<まとめ>
〇人が集まる職場には「会話がある」。まずは、悩みや相談を「伝えられる環境」をつくる。
〇省力化・効率化のアイテムやサービスは拡大している。職場に課題に合ったモノを導入してみる。

教えてくれた人

おいしい魚の専門家
一般社団法人さかなの会 理事長

ながさき一生さん


1984年、新潟県糸魚川市筒石生まれ。漁師の家庭に生まれ、18年間家業を手伝い過ごす。東京海洋大学を出た後、築地卸に務め、大学院にて魚のブランド化の研究を行う。魚好きのコミュニティ「さかなの会」を15年以上主宰。ドラマ「ファーストペンギン!」の漁業監修の他、メディア出演も多数。全国を飛び回り、講演やコンサルティングを行う。著書「魚ビジネス」(クロスメディア・パブリッシング)。


文:守雅彦
イラスト:アサミヤカオリ

FISHERY JOURNAL vol.4(2025年夏号)より転載

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