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各地の“旬食”を新幹線で輸送! JR6社連携で、生鮮食品をスピーディにお届け

今年5月17日〜18日、都内にて「新幹線でつながる旬食フェア」が開催された。期間中、全国各地から新幹線で輸送された約60品が集結。当日の模様と、新幹線を使った輸送サービスの魅力をご紹介する。

鮮度抜群の生カツオなどが
新幹線輸送で東京へ

2024年4月、「働き方改革関連法」が施行された。これにより、トラックドライバーの時間外労働時間に制限が設けられ、原則「年間960時間まで」とされた。この規制は「2024年問題」と呼ばれており、1日に運べる荷物量の削減、トラックドライバーの売上げ・利益の減少といった問題を引き起こすとされている。

物流業界では「2024年問題」のほかにも、複数の課題を抱えている。代表的な課題の一つが、CO2排出量の削減だ。「地球温暖化対策計画」で定められた温室効果ガスの削減目標値を達成するうえで、物流分野におけるCO2排出量の削減は、きわめて重要視されている。

こうした社会的な課題を受け、JR北海道、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR四国、JR九州(以下、JRグループ6社)は、北海道・東北、北陸、東海道、山陽、九州新幹線荷物輸送サービス同士で初めて連携し、イベントを開催した。
今回、開催された「新幹線でつながる旬食フェア」は、新幹線が走行するすべての区間で荷物を輸送できるようになり、北海道の新函館北斗駅から南九州の鹿児島中央駅までが輸送経路としてつながったことを記念したもの。また、JRグループ6社が荷物輸送サービスの分野で初めて連携した結果、実現したイベントとなる。当日は、全国各地の特産品などが各新幹線で東京駅まで輸送され、「グランスタ東京」のイベントスペース「スクエアゼロ」内で販売された。17〜18日にかけて輸送・販売された商品は全部で約60品で、販売スペースでは、生カツオたたきやトマトをはじめとする生鮮食品、銘菓、弁当など多彩な商品が陳列された。


一日につき7つの「商品販売開始時間」が設定されており、時間が近づくと、新幹線で東京駅に到着した商品が次々と運び込まれた。


「商品販売開始時間」の前から、イベントスペース内では商品を買い求める人々が行列をつくっていた。また、イベントスペースの外にはたくさんの人が集まっており、荷物輸送サービスや各地の特産品に対する注目度の高さがうかがい知れた。


5月17日の17時15分から販売された「もちもち生カツオたたき(刺身用)」。鹿児島県鹿児島市に拠点を置く「山実水産有限会社」が加工した商品だ。17日の早朝、鹿児島港で水揚げされた「一本釣りカツオ」をすぐに焼いて仕上げた、鮮度抜群の一品で、もちもちとした食感とほんのりと漂う香ばしさが魅力。魚特有の生臭さがほとんど感じられないのも、特筆すべき点だ。「もちもち生カツオたたき」は、7時42分に鹿児島中央駅を出る新幹線に積載され、16時48分に東京駅に到着。その後すぐに販売スペースに搬入された。

山口県産の「活きさざえ」も。当日朝に萩漁港から出荷し8時49分に新山口駅を発車する新幹線に積載され、16時48分に東京駅に活きたまま到着した。

まるでサクランボのような食感が楽しめる、福岡県のブランドトマト「桜桃トマト」。外皮が薄いため、トラックで長時間かけて運搬した場合、途中で実が割れてしまう恐れがある。しかし、揺れの少ない新幹線を運搬の手段とすることで、繊細な実を傷つけずに運ぶことができる。

スピード感と確実性が
新幹線輸送の最大の魅力

現在、新幹線を使った荷物輸送サービスとして、市場で展開されているサービスは4つある。「はこビュン」(JR東日本)、「東海道マッハ便」(JR東海)、「FRESH WEST(フレッシュウエスト)」(JR西日本)、「はやっ!便」(JR九州)だ※。いずれも新幹線で荷物を運ぶという点で共通しているものの、荷物を運べる区間などはサービスごとに異なる。

例えば「はやっ!便」(JR九州)は、博多駅〜熊本駅間あるいは博多駅〜鹿児島中央駅間で荷物を輸送できるサービス。事前予約不要で法人・個人の双方が利用できる点を特徴としており、例えば、受付時間内に博多駅の「みどりの窓口」に荷物を持ち込んだ場合、熊本駅には最速1時間55分で、鹿児島中央駅には最速2時間35分で荷物が輸送され、お客さまが駅で受け取れる。ちなみに輸送時、荷物は九州新幹線の未活用の業務スペース(旧車内販売準備室)に保管される。
また全国の新幹線が繋がったことにより、新幹線相互利用による荷物輸送が今後期待される。

(※「はこビュン」「東海道マッハ便」「はやっ!便」は荷物サービスの商品名。「FRESH WEST」は旅客列車により、高速かつ品質の高い状態で運んだ西日本の逸品の商品の証として、JR西日本グループが認定するブランド。)

 

JR九州 鉄道事業本部 営業部 今田隼さん

JR九州の列車事業本部に所属し、列車物流プロジェクトに携わっている今田隼さんは、「はやっ!便」をはじめとする、新幹線を使った荷物輸送サービスの魅力を次のように語る。
「九州の特産品をトラックで東京に運ぶ場合、丸1日〜2日間かかってしまいます。ところが新幹線で輸送すれば、早朝にとれた魚や野菜をその日のうちに東京へ届けることが可能に。やはり生鮮食品には鮮度が求められています。スピーディに大消費地に届けられるというのは、大きな魅力です。新幹線の高速性、定時性は高鮮度の生鮮食品にとってとても親和性が高い商品です。生鮮商品を高速かつ定時に輸送できることは、メリットです」。
JR九州では、新幹線を使った荷物輸送サービスを基盤に、さらにサービスの幅を広げていく予定もあるという。
「線路沿線から離れた場所にもたくさんの産地があります。離れた産地の品は2024年問題などでスピーディに運べない状況が今後来てしまいます。そうした産地の品も即日、輸送できるようなサービスも構築するとともに、地域の特産品を守る物流を目指していきたいです」。
今後、生鮮食品をスピーディに輸送したい事業者や、トラックでの長距離輸送には向かない繊細な商品を扱う事業者など、輸送に課題を抱えている事業者と積極的に協働していきたいという。

問い合わせ

JR東日本「はこビュン」
JR東海「東海道マッハ便」
JR西日本「FRESH WEST」(取り組み概要)
・株式会社ジェイアール西日本マルニックス 営業部Tel:06-6396-8624(問い合わせ)
JR九州「はやっ!便」


写真・文:緒方よしこ

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