好気環境で簡単・安全に窒素除去できる、閉鎖循環陸上養殖システムを開発
2023/12/07
閉鎖循環の飼育では、いかに窒素を水中から取り除くかが重要となる。国際水産養殖技術展2023のティビーアールブースでは、好気脱窒を組み込んで、簡単・安全に窒素除去できる閉鎖循環陸上養殖システムが展示された。
TBRのひも状ろ材を活用した
閉鎖循環陸上養殖システム
漁業用組紐ロープのトップメーカーとして知られるティビーアール(以下、TBR)が最初の漁業用組紐ロープを発売したのは1960年のこと。現在では、TBRのロープは農業用や住宅用、土木建築用のほか、レジャー製品やスポーツ用品にも使われている。また組紐製造技術を応用しひも状のろ材を開発。そのろ材を活用した水質浄化もまた、事業の柱へと成長させた。
そんなTBRがプレスカと協力して開発したのが、閉鎖循環陸上養殖システムだ。説明してくれたのはTBR環境事業部部長代理の山下修さん。
ティビーアール 環境事業部部長代理 山下修さん
「展示しているのは好気脱窒を組み込んだ最新の閉鎖循環陸上養殖システムです。閉鎖循環の飼育では、いかに窒素を水中から取り除くかが重要です。有機態窒素は泡沫分離装置で、アンモニア態窒素は生物ろ過装置で、硝酸態窒素は脱窒装置で処理できます。一般的には嫌気環境の脱窒槽が用いられますが、嫌気的環境の構築は簡単ではなく、硫化水素発生リスクがともないます。こうしたことから、これまで脱窒装置は閉鎖循環陸上養殖システムに利用されていませんでした。そんな現状を打破する技術が、プレスカと東京海洋大学の共同研究で開発されました。間欠ろ過による好気的脱窒を実現したのです」。
間欠式好気脱窒装置
「この技術をプレスカのカーヴァス式泡沫分離装置、当社のバイオコードによる生物ろ過装置に組み込むことで簡単・安全に窒素除去できる閉鎖循環陸上養殖システムを完成させました」。
カーヴァス式泡沫分離装置
生物ろ過槽(硝化槽)
まだコロナ禍にあった2019年にシステムは完成し発表したところ、極めて良い反応を得られたというが、山下さんは慎重に言葉を選びながら補足してくれた。
「今回の展示会ではアワビ用に構築しましたが、もちろん魚にも対応します。他業種からの参入を目指してお問い合わせをいただくことが少なくありませんが、システムを構築することと、事業として成功させることは別の話。どんな規模で何を養殖するのか、それに見合ったシステムを構築することが、事業を成功させる鍵になります。当社は単にシステムを販売するだけでなく、事業成功のお手伝いができるよう、丁寧にサポートしていきます」。
泡沫分離・ひも状ろ材・好気脱窒で構成された閉鎖循環陸上養殖システムにご興味を持たれた方は是非、コンタクトしてほしい。
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取材・文:FISHERY JOURNAL編集部