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インタビュー・コラム

映画『さよなら ほやマン』主演、アフロ(MOROHA)が感銘を受けた漁師の言葉とは

映画「さよなら ほやマン」は、ほや漁を生業とする青年を中心に展開される、“再生”の物語。メインキャストのアフロさん(写真中央)、呉城久美さん(写真左)、黒崎煌代さん(写真右)が、作品への思い、ロケ地で出会った漁師たちとの心温まる交流などについて語ってくれた。

小型船舶免許を取得し
漁にも初挑戦

ーー「さよなら ほやマン」でアフロさんは、漁師の青年アキラを演じられました。作中、アフロさん扮するアキラが海に素潜りし、宮城県の特産であるホヤを獲るシーンもありましたね。彼を演じるにあたり、どのような役作りをされましたか?

アフロさん(以下、アフロ):すべてのシーンを自分で演じられるよう、小型船舶の免許を取り、素潜りのスクールにも通いました。アキラの父親役を演じた澤口佳伸さんは、本物の漁師さんなので、澤口さんと一緒に海へ出て漁をしたこともあります。ただ、僕はあまり海には慣れていないので、漁をしている最中にめちゃくちゃ船酔いしてしまって。澤口さんに「こんなに波が穏やかな日に船酔いするようじゃ、お前はまだまだだな」って言われちゃいました(笑)。

ーー呉城久美さんは、東京からふらりとやってきた漫画家、美晴を演じられました。美晴は言葉遣いの荒い、一見すると粗暴な女性です。彼女のような特殊なキャラクターを演じるうえでは、苦労が多かったのでは?

呉城久美さん(以下、呉城):役作りのために自分の性格を改めて見返した時、「そういえば自分のなかにも、荒っぽい部分があったな」と気がついて。なので、自分のなかの美晴に近い部分を抽出し、表現するイメージで役を演じました。でも、いざ演じてみると「いい人が無理して粗暴な人物を演じているようにみえる」と言われてしまったんですよね。それからは監督と話し合いながら、美晴というキャラクターをつくり上げていきました。自分のなかの粗暴な部分をリアルに表現するという作業は、思いのほか難しかったですね。

ーー本作の撮影のため、宮城県石巻市にある網地島に長期滞在されたとのこと。網地島での日々はいかがでしたか? 印象に残っているエピソードがあれば、ぜひ教えてください。

呉城:撮影の合間などに、島ならではのゆったりとした時間が楽しめました。街灯が少ないので、夜には星がよく見えて。出演者や撮影スタッフと星空を眺めながら、カップラーメンを食べたのはいい思い出です。

黒崎煌代さん(以下、黒崎):網地島では、海の幸も豊富です。地元の漁師さんが私たちが泊まっている宿に、島で養殖された銀鮭やワカメをもってきて下さったこともありました。宮城県の名産の「銀鮭」がとくにおいしくて、今でも印象に残っていますね。

アフロ:漁師さんたちのご好意でバーベキューをしてくれたこともありました。この時、びっくりするほどたくさんのカニを持ってきてくれて。これを炭火で焼いて食べたんですが、めちゃくちゃうまかったなぁ。「これが俺たちの“正直な料理”だから」っていう漁師さんの言葉も、印象的でしたね。「素材そのものが抜群にいいから、手をかけなくてもうまいんだ」という意味で“正直な料理”と言ったんだと思いますが、自分たちが扱っている水産物に対する誇りや自信が、すごく感じられました。

ーー先ほどアフロさんより、網地島では漁も経験したというお話をうかがいました。漁はいかがでしたか?

アフロ:初めて漁をしてみて知ったことはいろいろとあります。とくに印象に残っているのが、網にウニがかかった時のこと。ウニを見た瞬間、僕は「ウニが獲れた!やった!」って思ったんですけど、漁師さんたちの反応は違っていて。「ウニは海藻を食っちゃうから、海では邪魔者なんだ」と、網にかかったウニをすべて廃棄していました。「ウニは高級食材だから、獲れたらうれしいはず」と思い込んでいたので、軽くショックを受けましたね。

黒崎:ウニが海藻を食べ尽くしてしまうこともあるそうです。ウニの食害のせいで海藻がなくなり、海底の岩場が露出してしまう現象は、「磯焼け」と呼ばれて問題視されているらしいですね。漁師さんとの交流を通して、少し漁業にも詳しくなりました。



心に突き刺さった
島の漁師の言葉

ーー「さよなら ほやマン」の撮影を経験したことで、ご自身にどのような変化がありましたか?

呉城:これまでテレビドラマや舞台で演じることが多く、映画に関しては、この作品ほど深く関わった映画は無いと思います。出演者や撮影スタッフの方々と密にコミュニケーションをとりながら、映画をつくりあげていくという作業は、とても新鮮でした。「さよなら ほやマン」という作品をより良いものにするため、本当に真剣にいろいろなことを考えたので、本作に対しては“私が責任をとるべき作品”という意識を強く抱いています。「さよなら ほやマン」への出演をきっかけに作品づくりの楽しさを改めて実感し、「今後、出演する作品にはより深く関わっていきたい」とも思いました。

黒崎:「さよなら ほやマン」は、私にとって映画デビュー作です。本作への出演をきっかけに、役者の道に本格的に足を踏み入れました。ただ、実は私は大学生で、周りの人たちは就活の真っ最中。親も私が就職するのを望んでいたようで、映画への出演が決まった時も「本当に、役者の道に進むの?就活したほうがいいんじゃない?」といった内容を遠回しに伝えられました。でも「さよなら ほやマン」が完成し、作品を観てもらったところ、親の態度が大きく変わって。きっと本作を観たことで、「役者の道に進みたい」という私の思いを認めてくれたんだと思います。自分が関わった作品をきっかけに、親をはじめとする周囲の人の考えを変えることができたのが、すごく嬉しかったですね。

アフロ:本作で共演した漁師の澤口さんは、魅力的でかっこいい人です。澤口さんと交わした言葉には、心に残っているものがたくさんあります。例えばある時、澤口さんが「島での漁の手法を変えたい」と話していたことがあって。これまでの手法を続けている限り、獲れる魚の量は少ないままで、島が潤うことはないそう。ただ、青森などで行われている底建網漁業を島に持ち込めば、獲れる魚が増え、島で加工業を起こせる可能性があるそうです。この時、澤口さんから聞いた「島で加工業ができるようになれば、漁を引退した人も働いて生活を維持できるし、島の経済が発展する」という言葉が印象的でしたね。自分たち漁師が潤うことだけでなく、島のおじいやおばあ、さらには島全体の未来を考えているのが、かっこいいと思いました。「自分も澤口さんのような視野が広く、情熱的な人になりたい」とも思いましたね。



DATA

さよなら ほやマン
11月3日(金・祝) より新宿ピカデリー他全国劇場にて公開中

映画『さよなら ほやマン』

「さよなら ほやマン」の舞台は、澄んだ海と豊かな海の幸に恵まれた、宮城県の離島「網地島」。この島のほや漁師アキラ(アフロ)と、その弟であるシゲル(黒崎煌代)の心には、大きな“しこり”があった。そんな二人の前に突如として現れたのが、東京からふらりとやってきた漫画家の美晴(呉城久美)。ひょんなことから始まった3人の共同生活をきっかけにこ、の出会いをきっかけに、それぞれが心の奥に閉じ込めてきた過去や感情が表出していく。

【出演】アフロ(MOROHA) 呉城久美 黒崎煌代 津田寛治 松金よね子
【監督・脚本】庄司輝秋
【音楽】大友良英 「あまちゃん」「いだてん」
【エンディングテーマ】BO GUMBOS「あこがれの地へ」(EPIC RECORDS)
【アニメーション】Carine Khalife
【製作】シグロ/オフィス・シロウズ/Rooftop/ロングライド
【制作プロダクション】シグロ/オフィス・シロウズ 
【配給】ロングライド/シグロ

出演者プロフィール

アフロ(MOROHA)
1988年生まれ、長野県出身。2人組アコースティックバンド「MOROHA」のMCとして、2010年にファーストアルバム『MOROHA』でデビュー。2022年には初の日本武道館単独公演を成功させた。これまで、ドラマシリーズ「宮本から君へ」のエンディングテーマや、映画『アイスと雨音』では劇中にて楽曲を披露。本作「さよなら ほやマン」で映画初主演を飾り、音楽界のみならずマルチな活躍が期待される。


呉城久美
大阪府出身。京都大学在学中に演劇を始め、京都を拠点する劇団・悪い芝居に約6年間在籍。2016年から「べっぴんさん」「ひよっこ」「まんぷく」と、NHK連続テレビ小説に立て続けに出演。映画では『来る』(中島哲也監督)、『浅田家!』(中野量太監督)、『流浪の月』(李相日監督)、『エゴイスト』(松永大司監督)など実力派監督の作品へ出演が決まるなど、次世代を担う実力派女優として注目が集まる。


黒崎煌代
2002年生まれ、兵庫県出身。2022年に開催された役者オーディション「レプロエンタテインメント30周年企画『主役オーディション』」で約5000人の応募者の中から合格し、芸能界入り。2023年後期NHK連続テレビ小説「ブギウギ」で俳優デビューを果たし、“天然”だけれど、動物を愛するヒロインの弟・六郎を演じる。本作「さよなら ほやマン」が映画デビュー作品となり、いま最も注目される若手俳優界の新星。


文/緒方佳子
写真/松尾夏樹

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