【2026年度】都道府県のスマート漁業、漁業DX事業①「北海道・東北エリア」
2026/07/03
都道府県の2026年度当初予算には水産業におけるデジタル技術の導入やスマート漁業の社会実装に向けた独自の補助事業が数多く盛り込まれている。地域ごとに展開される水産施策をシリーズで紹介する。第1回は北海道・東北エリアでそれぞれの地域特性に応じた水産業のデジタル化支援について解説する。
1.2026年度の全体傾向と デジタル水産施策の方向性
2.北海道 広大な海域でのスマート水産業推進と DX人材育成の強化
3.青森県 漁村地域の活力向上に向けた 新技術導入と活性化の支援
4.岩手県 シン・水産業リボーン宣言に基づく サーモン養殖の推進
5.宮城県 次世代型陸上養殖と スマート漁業を支える人材育成
6.秋田県 人口減少に対応する 水産業の省力化とデジタル化推進
7.山形県 データを活用した効率操業と スマート水産業の基盤構築
8.福島県 水産業の持続的発展に向けた DX推進と生産体制の再生
2026年度の全体傾向と
デジタル水産施策の方向性
2026年度の都道府県当初予算では、深刻化する労働力不足や、地球温暖化に伴う激しい海洋環境の変化に対応するため、水産業のデジタル変革(DX)やスマート漁業の導入に向けた予算措置が全国的に目立つ。特に北海道・東北エリアでは、独自の資源回復や養殖技術の高度化と組み合わせた先進的な取り組みが数多く盛り込まれた。
北海道
広大な海域でのスマート水産業推進と
DX人材育成の強化

地域に適したスマート水産業の社会実装を加速
北海道は2026年度当初予算において、水産林務費を計上し、広大な海域を抱える地域に適したスマート水産業の社会実装を加速させている 。海洋環境の変化や深刻化する労働力不足に対応するため、水温情報のリアルタイム共有システムの構築や、デジタル技術を用いた密漁監視などの取り組みを推進する。
また、漁業経営の安定化に向けて、水産業成長産業化加速化支援事業などを活用し、漁業者へのスマート機器導入を強力に支援している。さらに、操業の効率化にとどまらない取り組みとして、漁業DXを担う次世代の人材育成や、産地を支援する取り組みを通じたサプライチェーンの構築にも注力する。資源保護と高い収益性を両立させる次世代型漁業の基盤づくりを着実に進め、本道の持続的な発展を目指す方針である。
青森県
漁村地域の活力向上に向けた
新技術導入と活性化の支援

漁業者グループなどを対象に漁村活性化構想の実現に向けた取り組みを支援(画像:©ikeda_a/Shutterstock.com)
青森県は2026年度当初予算において、漁業者の所得向上と生産体制の維持を図るため、新たな漁業振興施策を展開している。特に重要とされるのが「青森県漁村地域の活力向上事業」である。この事業では、漁業者グループなどを対象に、漁村活性化構想の実現に向けた取り組みを支援する。
近年の海水温上昇に伴う漁獲対象魚種の変化や、高齢化による担い手不足といった課題に対し、新技術の導入や新商品開発、販売促進活動に係る経費を支援し、地域全体で活力向上を図る体制を構築する。漁業の生産性向上にとどまらず、流通や加工の段階も含めた関係者の総合的なサポート体制と役割分担を進めることで、漁村地域全体の持続可能性を高めるための取り組みを強化している。
岩手県
シン・水産業リボーン宣言に基づく
サーモン養殖の推進

環境変化に対応した水産業の再生に向けた取り組みを推進(画像:©ikeda_a/Shutterstock.com)
岩手県は2026年度当初予算において、「不漁に打ち勝つ!シン・岩手県水産業リボーン宣言」を掲げ、環境変化に対応した水産業の再生に向けた取り組みを推進している。深刻なサケ資源の減少や高水温といった課題に対応するため、「マーケットイン型サーモン養殖推進事業費」などを計上した。この事業では、海面養殖サーモンの生産拡大を目指し、高品質かつ高水温に対応した新たな種苗の開発を進めている。
また、「さけ定置合理化など実証事業費補助」を活用し、サケふ化場施設を有効に利用した海面養殖用種苗の生産実証を支援するなど、従来の獲る漁業から育てる漁業への転換を後押しする。さらに、高水温に強いワカメやアサリ養殖への転換支援、藻場の再生なども進め、水産業の早期再生を目指している。
宮城県
次世代型陸上養殖と
スマート漁業を支える人材育成

次世代の水産業を担う人材の育成と技術革新に注力(画像:©ikeda_a/Shutterstock.com)
宮城県は2026年度当初予算において、次世代の水産業を担う人材の育成と技術革新に力を入れている。特徴的な取り組みとして、宮城県水産高等学校などの教育現場において、高校改革・人材育成拠点高校認定に伴う予算を活用し、次世代型陸上養殖やスマート漁業の研究を推進する体制を整えた。これにより、ICTなどを活用した水質管理や効率的な養殖システムの実証研究を行い、最先端のスマート漁業技術に対応できる若い人材の育成を図る。
また、水産加工業における多様な人材が活躍できる職場づくりへの支援なども盛り込み、業界全体の労働環境改善と生産性向上を両立させる方針である。デジタル化による操業や管理の効率化を進めることで、地域経済の活性化を強力に牽引している。
秋田県
人口減少に対応する
水産業の省力化とデジタル化推進

限られた人員でも持続可能な生産体制を維持するためのデジタル化を推進(画像:©ikeda_a/Shutterstock.com)
秋田県は2026年度当初予算において、農林水産分野の予算を計上し、人口減少社会に対応したアプローチを展開している。水産業における最重要課題である深刻な高齢化と担い手不足に対し、限られた人員でも持続可能な生産体制を維持するためのデジタル化を推進する。具体的には、操業の安全性向上と省力化を目的としたスマート漁業技術の導入を支援し、海洋観測データを活用した効率的な操業への転換を図る。
これにより、燃油コストの削減や出漁の最適化を実現する。また、関係機関や漁業者との連携を密にし、デジタル機器の活用を含めたサポート体制も強化することで、地域の意欲ある漁業者が新しい技術を円滑に導入・活用できる環境づくりに注力している。
山形県
データを活用した効率操業と
スマート水産業の基盤構築

デジタル技術を導入したスマート水産業の基盤構築を進めている(画像:©Wako Megumi /Shutterstock.com)
山形県は2026年度当初予算において、厳しい海洋環境の変化や資源減少に直面する水産業の構造転換を図るため、デジタル技術を導入したスマート水産業の基盤構築を進めている。沿岸漁業の競争力強化に向けて、海水温や海流などの海況データを素早く収集・分析し、漁業者が手軽に確認できるシステムの運用と活用を支援する。これにより、効率的な漁場探索が可能となり、操業時間の短縮や操業コストの低減につなげる。
また、養殖業の分野においても、ITを活用した水温や水質の監視システムの導入を進め、気候変動リスクの軽減と生産の安定化を目指している。行政と漁協、試験研究機関が一体となり、現場のニーズに即した技術の社会実装を後押しすることで、持続可能な漁業を確立する方針である。
福島県
水産業の持続的発展に向けた
DX推進と生産体制の再生

生産体制の再生とデジタル化を融合させた施策を展開(画像:©Wako Megumi /Shutterstock.com)
福島県は2026年度当初予算において、本県水産業の持続的な発展とさらなる復興に向けて、生産体制の再生とデジタル化を融合させた施策を展開している。海洋環境の変化に柔軟に対応しつつ、安全で効率的な操業を実現するため、水産試験場などの研究機関と連携したスマート漁業技術の導入調査や実証を推進する。具体的には、ICTを活用した沿岸海況情報の迅速な提供や、養殖施設における管理システムの高度化を支援し、操業の効率化とリスク管理の徹底を図る。
また、水産物の流通・加工段階におけるDXも視野に入れ、電子入札システムの活用やトレーサビリティの確保など、サプライチェーン全体のデジタル化による付加価値向上を目指している。こうした取り組みを通じて、意欲ある漁業者の経営安定と新たな担い手の確保を進めていく。
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取材・文/フィッシャリージャーナル編集部



