持続可能な漁業のために「MSC認証」とMSC「海のエコラベル」の普及へ
2024/09/12
減少し続けている世界の水産資源だが、このままだと身近な魚が食べられなくなるかもしれないと言われている。そこで、持続可能な漁業の実現のために、MSCジャパンが取り組んでいるのが、「MSC認証」とMSC「海のエコラベル」の普及である。6月4日に開催された、MSC「さかなかるた大会」では、トークセッションも行われ、持続可能な漁業を考え直す場となった。
かるたで楽しく学ぶ
持続可能な漁業の取り組み
MSCジャパンは、国連が定めた6月8日の「世界海洋デー」を機に、「守ろう豊かな海。選ぼうMSCラベル」キャンペーンを開始。そのオープニングイベントが、6月4日に開催され、MSCアンバサダーのお笑い芸人・ココリコの田中直樹さん、邑久町漁業協同組合 代表理事の松本正樹さん、明豊漁業株式会社 代表取締役の松永賢治さんらによるトークセッションや、一般参加の方々による「さかなかるた大会」が行われた。
写真:「さかなかるた大会」の様子
「さかなかるた」は、魚の表皮(模様や色)のみで何の魚かを当てるかるたで、ウロコの凸凹感を特殊な印刷技術で再現したもの。本大会ではそれをアレンジし、主にMSC認証の魚種で制作された「MSCオリジナルさかなかるた」が使われた。最後には、本大会の優勝者とココリコ田中さんの記念対戦も行われ、会場は大いに盛り上がった。
写真:「MSCオリジナルさかなかるた」
水産資源は、獲りすぎることなく適切な管理を行えば今後もずっと獲り続けていくことが可能であるとされているが、現在、水産資源の3分の1以上が持続可能なレベルを超えて漁獲されていると言われている。このままだと身近な魚も食べられなくなるかもしれない。そうした未来を変えるべく、MSCジャパンは水産資源や環境に配慮し、適切に管理された持続可能な漁業に関する認証「MSC認証」の普及に取り組んでいる。MSCアンバサダーのココリコ田中さんは、「ここで取り上げられている『MSC認証』が広まれば、持続可能な漁業の実現により、海の魚たち、生きものたちが、また元のように戻ってくる」と、MSC認証の重要性と希望を語った。
未来の水産資源を守る
「MSC認証」の普及を
今回のイベントには、MSC認証を取得した団体も登壇した。世界初となる牡蛎の垂下式漁での「MSC認証」取得に取り組んだ、邑久町漁業協同組合代表の松本さんは「うちが先祖代々行われ、後継者も多いこともあり、認証したことで次の世代に繋げていくには、どうしたら良いか、今の関係を守っていくために、自分たちに何ができるか何を調査したら良いか、というのを調べながらみんな積極的に自発的に参加していただけるようになった」と、認証を取得したことで、組合員の意識が変わっていったことを語った。
また明豊漁業株式会社の松永さんは、「私たちのやっている一本釣り漁業は、工夫よりも、私たちがこの認証を取得し続け、消費者の皆様から厳しい声をいただいて、その中で漁業をやっていくということが結果的に資源を守ることに繋がると思うので、これからもMSC認証を維持し続けたい」と、生産者がMSC認証を取得することの意義を語った。
写真:左からMSCジャパン石井さん、優勝の津村遼太郎さん、ココリコ田中直樹さん、邑久町漁業協同組合松本正樹さん、明豊漁業松永賢治さん
「MSC認証」は、天然魚介類を対象とした持続可能な漁業のための認証制度として世界で最も認知され、高い信頼性を得ている。しかし、認証の認知度はまだまだ低く、ココリコ田中さんは、「海の生きものや環境を大切にし、ルールを守り漁獲された魚につけられるマークだが、まだまだ認知度は充分とは言えず、国内では、6年前の12%から少しずつ上がってきてはいるが、現在2割くらいで、知らない方も多い」と話す。
地球や海を取り巻く環境が変わってくなかで、「MSC認証」の知名度を高めていくことが重要になるだろう。
消費者の意識を変える
MSC「海のエコラベル」つき製品
認知度の反面、年々消費者のサステナビリティに対する意識は高まっており、MSC「海のエコラベル」のついた製品も増え続けている。世界では2万品目、国内では700品目がある。
写真:MSC「海のエコラベル」
これを受け、邑久町漁業協同組合代表の松本さんは「買うことで海の資源を守っているという意識を持っていただいている消費者の方と、色んな取り組みをしたい」と語っている。明豊漁業株式会社の松永さんは、「獲る側の意識が高まり、末端のスーパーさんが意識していただけることで、この輪が広まり、結果的に魚が居続けることに繋がる」と、これからの普及に対する考えを語った。
MSC「海のエコラベル」がついた製品は、イオングループ、生協・コープ、セブン&アイグループ、マクドナルドなどで取り扱われている、鮮魚や水産加工食品、缶詰、冷凍食品、おにぎりなど身近に購入できる商品にも展開されている。
水産資源を次世代へ残していくためにも、まずは漁業の現状を知り、MSC「海のエコラベル」のついた商品を手に取るところから始めたい。
文/FISHERY JOURNAL編集部