「地方こそ、成長の主役」地方成長戦略の鍵を握る注目の取り組み「海業」を徹底解説
2024/12/18
今注目の直営店はここ!
売れる店の共通点とは?
地域の収益を上げるためには観光客が重要な役割をもたらす。そこでよくあるプロジェクトが直営店だ。そんな直営店の成功事例といえる店舗を紹介する。
浜のうたせ
和歌山県の有田簑島漁協が運営している直営店。観光客がメインターゲットではあるものの、地元の声から生まれた店舗だ。地元の鮮魚や青果はもちろん、お土産や食堂など地元の人たちから声を形にしている。水揚げがどのように上がって、どのくらいなら売れるのか徹底して作られた店となっている。
太地漁協スーパーと道の駅
太地町漁協の事務所の向かいにある直営スーパー。事業変革に伴い地元に愛されるスーパーを徹底的に分析。地元の人たちが集まる店舗を目指した。経営改善を行い無事黒字化。そして国道沿いの道の駅に漁協直営の店舗を設営した。
直営スーパーでは地元客を道の駅では観光客をという具合にターゲットをしっかり別けることによって収益化を計っている。
塩釜 海の駅
塩釜市魚市場場内にある店舗。直売所や食事もできるがセリ見学やおさかなミュージアムなど水産を1つのエンターテイメントとしてとらえている複合施設。観光バスや見学ツアーなど地元小学生の勉強の場としてももってこいの工夫が散りばめられている。
おわせお魚いちば おとと
三重県尾鷲市にある直売所。尾鷲港で水揚げされた魚介類や地場産品を購入できる地元では有名な店舗である。
大きな敷地には地元の名産が並び、開店から地元客でにぎわいを見せている。そんな人が入るところには熊野古道の来訪者も吸い寄せられているようだ。
木更津魚市場直営 海鮮食堂KUTTA
木更津魚市場が直営するお食事処。木更津港から奥まったところにあり立地条件としてはあまり良いとは言えない場所にも関わらず、平日の朝から長蛇の列。SNSでのPR戦略も素晴らしいが、何と言っても価格帯がすごい。
県外からはもちろん、地元サラリーマンも食べにくるほどお手頃価格。隣の魚市場直営の直売所うお屋も、活き
浜の駅 おもと
小本浜漁協直産施設おもと。6次産業施設として作られた店舗とはいえ、地元の声を形にするために計算されつくした施設だ。地元の人たちが力を合わせた店舗は地元の人からも愛され、使われることでお店自体に人を寄せ付ける力が備わってきている。
いろいろな事例を挙げたが、実は成功している直営店には1つの共通点がある。
それは「地元客をしっかりつかんでいる」ということだ。
確かに地域の売上を伸ばすのは外部からやってくる観光客である。とはいえ、最初から観光客メインで集客するのでは集客できない。いくらネット検索して一行目にあろうとも、地元の人が1人もよらず、駐車場もがら空き店舗には観光客も近寄りがたいものだ。それよりも閲覧数が少なくとも地元民の口コミがいっぱいある店の方が俄然、興味をそそられる。
どれだけ地元の人に愛されているのかというのは遠回りのように見えて、一番効果的な観光PRになるかもしれない。
海業の成功への近道は
地元の魅力を見つめ直すこと
本当に多くの地方自治体が活気づいている。
漁業者と趣味の釣り、ダイビングと釣り船、商船とブルーカーボン等、様々なコラボレーションが全国各地で起きている。逆を言えば、今までのままではいられないと切羽詰まってきているのであろう。
そんな中「地域ならでは」を磨き、地元客が観光客を呼ぶということが1つの成功の鍵を握っているようだ。単なる真似をするでもなく、観光客を狙い撃ちするわけでもなく、一見遠回りそうだけどしっかり地元を見つめなおすことが成功への近道だと感じる。
とはいえ何から手を付ければよいかわからないということであれば、まずは地元以外の様々な人の話を聞いてみることが一番のヒントになるかもしれない。
ただ1つ言えることは、「地元の魅力はすでにある」ということだ。
教えてくれた人
海のイドバタ会議総座長
守雅彦さん
慶應義塾大学卒。造船業、海事専門商社を歴任。海の地方創生アドバイザーとして独立。
漁業、海運業、海洋環境など様々な業界に精通。「海のイドバタ会議」名義で、海に関わる情報発信を行う。全国30地区の海業に関わる新規事業に携わる。
文/守 雅彦