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インタビュー・コラム

‘‘漁師の娘‘‘櫻坂46・大沼晶保さんが語る「海の仕事の魅力と喜び」

静岡県の駿河湾を望む漁師の家に生まれ、趣味は釣りと魚を捌くこと。陸岸から5海里までの海域を自由に航行できる二級小型船舶操縦士免許を取得し、「櫻坂46のメンバーを乗せて、いつか海をドライブするのが夢」という大沼さんに漁師の魅力を伺った。

小さいころから海が遊び場
車は酔うけど船はへっちゃら

大沼さんにとって海は、幼い頃からの遊び場。潮の香りに包まれ、暮らしの側にはいつも海があった。「いまも昔も、海はもちろん大好きですが、釣りも好き、船も好き、魚も好き、そして魚を捌いて食べるのも大好きです」。海からの恵みをしっかり味わい尽くすのが漁師の娘としての作法だ。幼少期は、年末の繁忙期になれば朝5時に起きて、並べた発泡スチロールを手をかじかませながら氷を詰める手伝いをしたという。

なかでも、鮮烈に記憶に残っているのは、祖父が浜辺で魚を捌く姿だったという。「祖父が海を背にして、揚がったばかりの魚を浜で捌いていると、カモメが“まだか?”と言いたげに群れで寄ってくるんです。祖父のトントン響く包丁の音と、カモメが群がるあの光景が好きです」と話す。自然と共に生きる漁師としての営みが、幼い心に刻まれている。

6年前からはじめた魚を捌く練習は、アジに始まり、どんどん大きい魚にも挑戦している。捌き方を教えてくれたのも漁師のお父さんだった。「大きい魚は力が必要なので難しいんです。初めてタチウオを捌いたときは、隣で見ていた父が『もっと優しく! ここをあーしてこーするんだよ!』と、つきっきりで教えてくれました」。

父から学んだ技術を活かし、櫻坂46公式YouTubeでも魚を捌き、メンバーに振舞う様子も公開されている。また、3年前には二級小型船舶操縦士免許を取得。「車は酔うのに、船だと全然平気。ドライブするならやっぱり海がいい」と語り、海との関係をますます深いものとしている。

船上の会話は怒鳴り合い
海を愛する父の厳しさ

お父さんは、漁師という仕事を心から誇りに思い、漁を根っから愛する男なのだという。「父は、“漁師は俺の天職だ”とずっと言っていました。少年のように、夢やロマンを語り、獲ってきた魚を家族が美味しそうに食べている姿を何よりも喜んでいました。そして、どんなに朝が早くても、どんなに寒い季節でも、私は今まで父の愚痴を一度も聞いたことがありません。その姿が今の私に大きな影響を与えていると思います」。さらに、漁師の資質についてこう続ける。「父がよく“自然に勝てる人なんていない。でも、自然と一緒に働ける人が漁師。それが漁師の凄さだ”って言うんです」。夜中の1時、2時に出港し、寒さが骨に刺さるような日もある。それでも海は毎日違う表情で迎えてくれる。「“今日はどんな海かな?”ってワクワクするんです。海は飽きないんですよね」。

陸(おか)に上がっているときはいつもニコニコ優しいお父さんは、船に乗ると一変して厳しい海の男に変わる。「家での父はいつもおっとり優しくて、私がやりたいと言ったことを否定せずに“いいよ”と応援してくれます。でも、一緒に船に乗ると、めちゃくちゃ厳しいんです。私が何かしでかすたびに、“危ないぞ!”と大声で怒鳴られます。それに、エンジン音がうるさいから、会話が自然に大声になって、ずっと親子で怒鳴りあっているみたいで(笑)。でも、海に命を預けているのですから、厳しくなるのは当然のこと。陸から海に行ったときに、漁師としてのスイッチが入る父もカッコいいと思います」。

どうなる担い手問題?
いま伝えたい漁業の魅力

実は大沼さんのお姉さんも漁師として実家で働いていたという。「姉は大学で生物として魚を研究するくらい魚好き。メールで“今日はこんな珍しい魚がいたよ!”と大喜びで私に写真を送ってくれるんです。漁師の仕事は、力仕事なので女性には大変なことも多いのでしょうが、姉の場合は大変さより、“楽しい!”という気持ちが勝っているみたいです」。現在お姉さんは魚のクリエイターやヨットの仕事を行っており、漁師とは別の道に進んでいる。「父はいつも、お前たちは自分のやりたい道を歩け、と言ってくれます。どんな道を選ぼうと、お前たちがやりたいと思うことを止めない、と。そういうところが本当に父らしいなと感じます」。

2025 年に放送された「海と生きる漁師!〜アガってる漁師に聞いてみた〜」(テレビ神奈川)で、大沼さんはナレーターを務めた。番組は、日本の漁師の平均年齢は56・4歳(2022 年、水産庁調べ)と深刻な高齢化が進んでいるなか、魚の魅力を最大限引き上げつつ、働きやすい環境を構築することで、漁師を夢見る若者が集まるアガってる漁業現場を紹介するというもの。

各地の漁師と触れ合った大沼さんは、「漁師さんたち、めちゃくちゃ仲良いんです。 “魚が来たぞ!お前も来いよ!”みたいな声の掛け方が本当に温かくて。競争ではなく、同じ海を守る仲間という空気があって、胸が熱くなりました」と振り返る。番組内では、情熱と工夫で漁業を盛り上げようとしている漁師を取材し、魚好きや釣り好きなど将来漁師を目指そうとしている人へ、漁師の魅力を伝える。「この番組で少しでも漁師に興味がある方々を後押しできたら嬉しいです」。

最後に、海の仕事を目指す人へメッセージをお願いすると、迷いなくこう答えた。「大変なこともありますが、海には人を強くする景色があります。海が好きなら、理由はそれだけで十分。まずは海の世界に飛び込んでみてほしいです」。海とともに育ち、海に心を動かされ続けてきた大沼晶保さん。彼女の言葉からは、漁師の暮らしのリアルと、そこにある喜びがまっすぐに伝わってきた。

PROFILE

大沼晶保

1999年生まれ、静岡県出身。アイドルグループ・櫻坂46のメンバー。代々続く漁師の家に生まれ、自身も二級小型船舶操縦士免許を所持。櫻坂46公式YouTubeチャンネルでは、父と釣りに出かけたり、魚を捌く様子も公開し、たちまち話題に。力が強く、独特な感性の持ち主であることから、「駿河湾が生んだ怪力女」「大不思議」といった異名を持ち、レギュラー出演する「サクラミーツ」(テレビ朝日)をはじめ、様々なバラエティ番組で活躍中。
 

 


文/脇谷美佳子 写真/松尾夏樹

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