「スマ」種苗の大量生産を実現!成功を支えた紫外線水殺菌装置「HODシステム」とは
2024/07/25
クロマグロやサクラマスと並んで、養殖魚の成功例として近年注目されているのが愛媛県の「スマ」。幻の高級魚といわれるスマを卵から孵化させた完全養殖成功の背景には、画期的な紫外線水殺菌装置「HODシステム」の導入があった。
高性能紫外線水殺菌装置
「HODシステム」
刺身で食べれば見た目も味もまるでマグロ。そんな「スマ」という魚をご存知だろうか。
漁獲量の少なさから水揚げ産地でしか食べられない「幻の高級魚」といわれているが、近年愛媛県が養殖に力を入れており、2019年から「媛スマ」のブランドを展開。
徐々に百貨店やスーパー、料亭などを中心に出荷されている。
全長100mmになったスマの稚魚(上)は種苗施設から養殖業者へ出荷される。スマは孵化して半年から1年ほどの短い期間で成魚(下)になるため、収益性の高い養殖魚として期待されている。
愛媛県農林水産研究所水産研究センターがスマの完全養殖サイクルの確立に成功したのは2016年。
安定して生産するには大量の種苗が必要となることから、愛媛大学と連携して養殖業者に出荷する種苗生産に取り組んできた。
天然魚よりも2〜3ヶ月早く産卵をさせる、大量の餌を与えて共食いさせない環境を作るなどさまざまな課題をクリアするため、2018年に70kL水槽6面を配置したスマ生産施設を整備。
6面の水槽で大きさごとに振り分けたスマを育てるのだが、その際に重要なのが、大量に使用することになる水のバイオセキュリティだ。
スマの稚魚の飼育には大量の餌が必要で、餌が不足した途端に共食いが始まる。その対策として、全長25mm前後に成長した時点でスリット選別し、サイズごとに4~6の水槽に分けられる。
中圧紫外線が効果的に殺菌
データを可視化し安全に運用
センサーは紫外線量そのものの計測ではなく、ランプの出力、紫外線透過率、処理流量をリアルタイムでタッチパネルモニターに表示して、個々の状態を観察できるようにする。装置を通過した処理水には確実に必要照射線量が照射されていることが確認でき、同時に各運転データをすべて記録、トレーサビリティなどさまざまな要求にも対応できるようになる。遠隔監視も可能だ。
水産養殖において、飼育水の汚染は何よりも避けなくてはならない。
そのために水産研究センターが導入したのが、紫外線水殺菌装置「HODシステム」だ。
中圧紫外線ランプを使用したこのシステムは、独自の光学機構によって紫外線が装置内を反射しながら通過し、処理水にムラなく均一な殺菌性能を得るもの。一般的な低圧紫外線ランプよりも少ない数で、病原細菌、ウイルス、寄生虫などの処理に有効な120mj/㎠以上の照射量を発揮し、安全な環境でスマを育てることを可能にした。
制御とモニタリングにおいても性能が高い。必要照射線量、水の流量、紫外線透過率のパラメータを設定しておくことで、個々の数値が変化した場合に装置が自動で出力を調整する。運転中のデータは常に記録され、モニター画面からチェックできる。
こうした紫外線殺菌性能の「見える化」で、トレーサビリティの高い養殖の運用を叶えている。
自動出力調整は省電力にもつながり、ランプの交換頻度も少ないからコスト削減効果にも寄与する。高性能・低コストの流れは大型の紫外線装置でも実現されているようだ。
愛媛県沿岸で天然のスマが産卵する時期は通常7月から8月。センターでは6月採卵の通常期生産、4月採卵の超早期・早期生産の種苗生産技術を開発し、早ければ冬までに出荷サイズの2kgに達する効率的な養殖サイクルを構築した。
高性能紫外線水殺菌装置「HODシステム」の内部構造を紹介予定。独自の全内部反射(TIR)技術を採用した「HODシステム」。処理水に対し紫外線が均一に照射され、高い殺菌機能を得られる構造をデモ機を使って説明する。また、魚類・甲殻類(養殖)に向けたビール酵母製品(細胞壁、βグルカン)も紹介。免疫改善効果・嗜好性/活力増加・腸内環境改善などの効果について解説する予定だ。ブース番号はF-71。
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島貿易
TEL:03-3546-3129
文:本多祐介
FISHERY JOURNAL vol.2(2024年夏号)より転載
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