10年前に比べて仕入れ状況が悪化している魚種　3位サンマ、2位ウニ、1位は?

2025/06/16

近年、水産物が手に入りにくい状況が続くなか、一般社団法人Chefs for the Blue は、飲食店の水産物調達の実態を調査。10年前と比較して、流通は95%が「減少した」、価格は99%が「高くなった」という回答が得られた。

水産物の調達が困難に
飲食店での実態調査を実施

「和食」がユネスコ無形文化遺産として登録されてから、約12年が過ぎた。島国で生まれた和食は、海の豊かさをベースに発展し、先人から受け継がれてきた多くの魚料理は、日本に暮らす人々の命と健康を根底から支えてきた。また、インバウンド消費額は2024年に８兆円を越え、訪日外国人にとっても「食」が大きな渡航目的である（観光庁調べ）ことからも、私たちの魚食文化が、世界に誇れる魅力的なコンテンツであることに疑いの余地はない。

しかし近年、そんな魚食文化醸成に大きな役割を果たしてきた飲食店にとって、水産物が手に入りづらい状況が続いている。2020年に改正漁業法が施行されたものの、ほとんどの魚の漁獲量は減少を続けている。スルメイカやサケなど、記録的な不漁がニュースになる魚だけでなく、江戸前鮨の花形コハダや、地域の食にとって重要なマダコ、シャコ、和食にとって大切な天然マコンブなど、多くの魚種が消えつつある沿岸の海も多いのが現状だ。

また、日本の漁業・養殖業の生産量は1980年代の1/3以下となり、沿岸漁業の生産量も6割以上減少した。食用魚介類の自給率は54%（2023年度／概算値）と、1964年（113%）の半分以下。世界的なタンパク質供給不足が目前に迫るなか、これは食料安全保障上の大きな課題であり、さらにこれまで培ってきた食文化を維持継承することも困難という危機的状況である。

このような背景を踏まえ、Chefs for the Blueは、水産物生産の減少が日本の飲食業界に与えるインパクトを明らかにするため、全国の飲食店のオーナーおよび食材調達担当者を対象に記名式アンケートを実施した。

結果は以下の通りである。

◯流通する物量は10年前に比べて95.2%が減少したと回答
（とても減った41.3%、減った53.9%）

◯価格は10年前に比べて99.6%が高くなったと回答
（とても高くなった66.4%、高くなった33.1%）

◯物量減および価格高騰について、高価格帯の店舗ほど強く感じると回答
（顧客単価30,000円以上の店は、物量がとても減った51.3%、価格がとても高くなった78.1%）

◯特に仕入れ状況が悪化した魚種として名前が挙がった魚種の数は、1位イカ類、2位ウニ、3位サンマ、4位海老類、5位タコ類、6位アワビ、7位サバ、8位アナゴ

◯98％が、水産物の仕入れの今後について危機感があると回答
（危機感がとても大きい72.7%、危機感が少しある25.4%）

この結果を受け、調査を行ったChefs for the Blue代表の佐々木ひろこ氏は、「解決に向けた対策のためには、まず海でなにが起きているのかを正確に把握することが先決ですが、日本の資源調査・評価関連予算は、漁業生産額で下回るアメリカの半分にも及びません（※）。まずは資源の調査や評価、研究に十分な予算があてられたうえで、日本の大切な資産・資源である魚食を守るためにも、一刻も早い水産資源の保全・回復が求められています。」と述べる。

また、調査において99%の回答者が水産資源に関する生産情報を求めていたことから、「今後飲食店をはじめとした社会に対しても、生産履歴や流通情報等、情報提供（トレーサビリティの開示）がされることを期待します。飲食店は、サステナビリティに配慮した食材調達やメニュー開発が可能となります。」と展望を話した。

※Chefs for the Blue調べ。
　2023年度漁業産出額：日本 9,534億円（海面）／アメリカ 7,112億円（商業）
　2025年度資源調査・評価関連予算：日本 98億円の内数／アメリカ 238億円

以下、一般社団法人Chefs for the Blueのプレスリリースより