点検作業の手間や労力削減へ 日本水中ドローン協会に聞く、漁業現場で広がる水中ドローンの可能性
2026/08/14
業界を支える人物たちが、自身の経営哲学や課題解決への視点、これからの漁業の未来を綴る本連載。今回のテーマは、漁業の現場での活躍が期待されている水中ドローン。その普及に努める「日本水中ドローン協会」の副理事・植木美佳氏に、活用のメリットなどをご説明いただく。
漁業の現場での普及が
見込まれる水中ドローン

水中ドローンは、水中で活動する無人探査機の通称。潜航が可能な有線式の機体を指します。船上や陸上からの遠隔操作をとおして、操縦者はリアルタイムで映像を確認しながら水中ドローンを操縦できます。
水中で遠隔操作ができ、なおかつ映像を届けるロボットには、全自動で動く「AUV(自律型無人探査機)」や、ケーブルを介して人が操縦する「ROV(遠隔操作型無人探査機)」など、複数のものがあります。
現状、実用性がもっとも高いと考えられており、海の現場で普及しつつあるのは、ROV。これを受け、日本水中ドローン協会では、ROVを水中ドローンと位置付けています。協会が定義する水中ドローンは、人の手で持ち運べる小型のROV。機体の大きさの目安は重量70kg以下、長辺1m以下です。
空中で使用するタイプのドローンはすでに幅広い現場で普及していますし、近年は免許制度が設けられるなど、安全に使用するための環境も整備されました。一方、水中ドローンに関しては免許制度はなく、安全に使用するための環境も整っていません。水中ドローンそのものへの認知度も、まだまだ低いといえます。
「日本水中ドローン協会」は、海洋国家である日本において、水中ドローンの普及を進めると共に、安全に運用するための環境整備を目的として、2019年に設立された団体です。現在、当協会では、水中ドローンを使いこなせる人材の育成、水中ドローンに関連するシンポジウムの開催、媒体の発行などを行っています。なお、国内には「日本水中ドローン協会」が定める基準を満たした認定スクールが、50校ほどあります。

経費削減や人手不足の解消に
水中ドローン導入で得られるメリット
続いて、水中ドローンの導入によって得られるメリットについて、要点をまとめてご説明します。まず水中ドローンを活用することで、点検作業にかかる手間や労力を削減できます。カメラを通し、リアルタイムで水中の様子を見ながら操縦ができるので、例えば養殖の現場では網や水産物の状態を、藻場造成の現場では藻場の育ち具合などを手軽に確認できます。
生簀の状態の確認時は、水深40m以上の水域まで潜水して撮影・確認を行うケースもあり、その場合は身体的負担がかかるほか、危険が伴います。この課題の解決に役立つのが水中ドローン。潜水時の作業を一部、水中ドローンを使って行うことで、作業の危険性が軽減され、減圧症なども回避しやすくなります。
比較的低コストで導入できるのも、水中ドローンの魅力です。数百〜数千万円が一般的な相場感ですが、近年は、現場調査に活用できる数十万円台のモデルも登場。その結果、水産業をはじめとする幅広い分野で、水中ドローンの導入と活用が進んでいます。
また、潜水作業を担う人材が減少する中、水中ドローンの活用による作業の省力化と作業時の危険性低減にも期待が寄せられています。長時間の撮影と調査ができるため、水中の状況を把握しやすいという利点も見逃せません。
経費削減や人手不足の解消など、いくつものメリットが期待できる水中ドローンのニーズは、今後、さらに高まっていくと考えています。実際、一般企業からの「日本水中ドローン協会」への問い合わせは年々、増加していますし、会社での業務に必要だからという理由で、協会の認定スクールで学ぶ方も大きく増えています。
ちなみに認定スクールでは、座学と実習、筆記試験を受ける必要がありますが、これらすべてを丸1日で終えることが可能です。また、筆記と実技試験に合格すれば、「水中ドローン安全潜航操縦士」のライセンスも取得できますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
PROFILE
一般社団法人日本水中ドローン協会 副理事
植木 美佳氏

2019年より現職。水中ドローンの普及に努めると共に、全国各地で水中ドローンに関するデモンストレーションと講演を行う。「株式会社スペースワン」ドローン事業部に所属し、機体販売および活用提案、導入支援に携わる。潜水士、小型船舶一級の資格も保有。
FISHERY JOURNAL vol.5(2026年冬号)より転載




