漁場の状態を陸から遠隔で確認。海に浮かぶ“ICTブイ”で計画的な出航・作業が可能に
2023/12/07
シーフードショーで浜名湖養魚漁業協同組合・リージョナルフィッシュ、岩谷産業とともに共同出展を行っていたNTTコミュニケーションズは、漁業者向けに提供しているサービス『ICTブイ』を展示。水温や塩分濃度などの海洋データをスマートフォンや携帯電話で確認できる、というサービスだ。
海洋環境データを取得し
適切な管理や技術継承に繋げる
NTTグループの一員として、通話や通信に関連した事業を行っているNTTコミュニケーションズは、実は一次産業との関わりが深い。IoT技術を活用した遠隔での監視や機器の管理などのサービスを提供している。
そんなNTTコミュニケーションズが出展していたのが、漁業者向けに提供しているサービス『ICTブイ』。ブイに水温や塩分濃度センサーなどを搭載して、水温や塩分濃度などの海洋データを取得。取得したデータをドコモのネットワークを経由してスマートフォンや携帯電話で確認できる、というサービスだ。
ICTブイソリューションの説明パネル
『ICTブイ』が開発された経緯について、NTTコミュニケーションズソリューション&マーケティング本部ソリューションコンサルティング部地域協創推進部門第二グループ主査の佐々木明彦さんが教えてくれた。
「東日本大震災が切っ掛けでした。被災地の復興にお役に立てないかと、社内で復興支援室が立ち上げられました。社員が被災地に赴きヒアリングしたところ、養殖事業者さんから『震災の後、海の状態が変わってしまったのか、経験と勘が通用しなくなり海苔やカキが育たなくて困っている』という声がありました。そこで海洋データの取得を始めました。この養殖事業者さんの困りごとを解決するだけでなく、何故、カキや海苔が育たなくなったのか、その理由を解明して将来に残さねばならないと考えたのです」。
NTTコミュニケーションズ ソリューション&マーケティング本部 ソリューションコンサルティング部 地域協創推進部門第二グループ 主査 佐々木明彦さん
「一方で、どのように栽培すると海苔が良く育つのかは、これまでの漁業関係者や研究者の努力により、分かっていました。取得したデータと突き合わせてみると、理想的な育て方と合っていないことが分かりました。勘と経験をデータで補い適切に管理することで、再び海苔が育つようになったのです。この経験から、海洋環境データを提供するサービスは漁業者の方に役立つのではないかと、全国各地で検証を行いサービスとして提供するようになったのです」。
ブイに水温や塩分濃度センサーなどを搭載して、水温や塩分濃度などの海洋データを取得する
『ICTブイ』が取得するのは、水温・塩分濃度・クロロフィル・溶存酸素などのデータ。このデータがサーバーに飛ぶ。漁業関係者は自身が所有するスマートフォンなどの端末を使用して、専用アプリ『ウミミル』を介して遠隔で把握することができる。
『ICTブイ』は、経験や勘をデータで補い高収量へと導いてくれるだけでなく、陸にいながらスマートフォンで海の状態が分かるから計画的な出航・作業が可能となる。つまり、無駄な燃料消費や労働がなくなる。さらに、海洋環境がデータ化されるため、掲示板や日誌機能を活用することで技術継承にも活用できる。
『ICTブイ』購入費用は165万円(参考価格)で、データ閲覧時に使用する海洋計測アプリ『ウミミル』の月額利用料は3,520円/台(利用可能端末数は20まで)、通信料金は月額990円~/台。
ご興味を持たれた方は是非、NTTコミュニケーションズにコンタクトして欲しい。
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取材・文:FISHERY JOURNAL編集部