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漁業が抱える課題を解決! 循環型・環境再生型の「アクアポニックス」

AGRIKOが運営するSDGs17項目フルコミットの循環型農福連携ファーム「AGRIKO FARM」は、養殖と水耕栽培を掛け合わせた「アクアポニックス栽培」を採用している。環境負荷が少ない持続可能なファームを運営する株式会社AGRIKO代表取締役/俳優の小林涼子さんにお話を伺った。

メイン画像:「ビル産ビル消」を掲げ、屋上のアクアポニックス栽培で育てた魚や農作物をビル内のレストランで提供する。

<目次>
1.世界的に注目されている『アクアポニックス』
2.アクアポニックスの仕組み
3.SDGs17ゴールにフルコミット
4.サステナブルを超えた「リジェネラティブ」な仕組み

世界的に注目されている
『アクアポニックス』

地球温暖化による海水上昇や漁業による乱獲、化学物質やプラスチックによる海洋汚染、漁業就業者の減少などが原因で、2050年には日本の漁獲量はほぼゼロになるペースで減っていると警鐘が鳴らされている。

この危機的状況の救世主として期待されているのが養殖業である。だが同時に、養殖場の廃棄物や餌の残渣(ざんさ)、抗生物質使用などによる環境汚染リスクを抱えているのも事実だ。これらの課題を解決する糸口として世界的に注目されているのが『アクアポニックス』である。

『アクアポニックス』に取り組むAGRIKOは、飲食店の入るビル屋上で日本初の屋外型を実現し、「ビル産ビル消」により、フードロスやフードマイレージ、環境負荷を限りなくゼロに近づける。農業と養殖を組み合わせた人にも環境にもやさしい次世代型第一次産業だ。

アクアポニックスの仕組み


農業と養殖が一つになった世界的に注目されている循環型・環境再生型一次産業。水槽内で養殖する魚の残餌(ざんし)や排泄物をバクテリアが分解し、その栄養を吸収して植物が育ち(水耕栽培)、水が浄化されて水槽に戻る。AGRIKOでは日本初ビル屋上の屋外型のため雨水を利用し、LEDも不要。

SDGs17ゴールに
フルコミット

AGRIKO代表の小林涼子さんは、「植物工場とも養殖とも違い、ここは魚と植物が共生する小さな地球です。屋上なのでLEDは不要。育つ環境を自然に近い形にしています。半年ほどプロトタイプを試験的に行い、2021年から循環型農福連携ファームとしてスタートしました」と話す。

農福連携を実現するため、小林さんは農林水産省認定の「農福連携技術支援者」の資格を取得。障がい者の就労や生きがいづくりの場を生み出し、担い手不足や高齢化が進む第一次産業分野における新たな働き手確保に繋げる可能性を広げている。


企業と協業して障がいのあるスタッフと共に農園を運営することで、障がい者雇用やD&I(多様性と包摂)を推進。農業の持続と障がい者の社会参画を目指す「農福連携」に取り組む。コミュニケーションスキルの高い子育て中のスタッフも多く在籍。

「竹害で悩む地域から竹を譲り受け、『アクアポニックス』設備として利活用したり、企業と障がい者の方のマッチングも行っています。AGRIKO独自の取り組みを合わせると、SDGs17ゴールにフルコミットすることになりました」。

サステナブルを超えた
「リジェネラティブ」な仕組み

育てている植物は、水菜やハーブ、エディブルフラワー、魚はホンモロコやイズミダイなど。受注生産で営み、効率や生産性よりも、安心安全で美味しく、少ない環境負荷を武器にブランディングしている。

「安全に勝るブランドはありません。『アクアポニックス』で育った魚たちは、2年連続で自然産卵しました。まさに持続可能な産業です。この環境で魚たちが自然産卵したことにはとても驚かれました。『アクアポニックス』は、サステナブル(持続可能型)からさらに一歩、歩みを進めた、リジェネラティブ(環境再生型)なのです」と小林さんは命の恵みに感謝する。

リジェネラティブという点でいえば、広い農地を確保しなくても取り組める都市型の『アクアポニックス』は、第一次産業の漁業と農業に気軽に触れられる機会を子どもたちに提供している。

「私たちの生活になくてはならない食を支えている漁業と農業には、気候変動のほか高齢化や後継者不足など、さまざまな課題が山積みです。作る人がいなければ、私たちは食べること、つまり生きることができません。第一次産業に携わる人を心からリスペクトし、人と人の輪を繋いでいきたいと考えています」。

AGRIKOという社名は、「アグリカルチャーを受け継ぐ子どもになる」という思いが由来だ。子どもたち向けのワークショップも積極的に行っている。


生活に身近な「食」をテーマにごみゼロの課題に向き合うことを目指し、食品ロス対策を実践する「親子で体験お料理教室」などのワークショップを開催。第一産業の課題である後継者育成のきっかけ作りとして、次世代へのバトンを渡す場を提供。

「『アクアポニックス』が植物とバクテリア、そして魚の共生によって循環している姿を見て食事のありがたみを感じてほしい」と、小林さんはレストランで供されるメニューを見せてくれた。「屋上で育ったこのバジルは、味も香りも通常より濃厚で、瑞々しい葉をソースにしています。本当に感動的な美味しさです」と話す。

小宇宙を感じさせるFARM to TABLEの一皿を通じて、「食」への感謝は一層深まるだろう。


屋上のアクアポニックスでシェフが魚を獲る様子。ビル階下の厨房に運ばれ、新鮮なまま調理される。AGRIKO FARM PW桜新町(OGAWA COFFEE LABORATORY 桜新町屋上)、白金(gicca 池田山屋上)の2拠点共に「ビル産ビル消」を実現している。

 

取材協力

株式会社AGRIKO
代表取締役

小林涼子さん

1989年生まれ、東京都出身。4歳で子役としてデビュー後、雑誌モデルや映画、ドラマなどマルチに活動。2021年5月に株式会社AGRIKOを設立。環境負荷の少ないアクアポニックス式の農園運営を行いながら、障がい者雇用や食育イベントなど、SDGsの推進にも積極的に参加。環境省『第10回グッドライフアワード』実行委員会特別賞「SDGsビジネス賞」受賞。農林水産省 食料・農業・農村政策審議会食糧部会臨時委員も務める。


文:脇谷 美佳子

FISHERY JOURNAL vol.2(2024年夏号)より転載

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