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【稼げる漁業】まずは地元市民をファンにする! 漁港に人を呼び込む仕掛けづくり

西海市の行政と漁協を巻き込んだ事業で大きなうねりを生み出している西海クリエイティブカンパニー。稼ぐために必要な「漁業のブランド化」をどのように果たしていくのか、中心になって動く同社創業者の浪方勇希さんに、その仕組みを伺った。

<目次>
1.地域を巻き込み、ホコリを生む 三位一体のブランド強化策
2.人を呼び込むアイデア
アイゴの干物
フレンチシェフ監修、漁協のコロッケ
「お魚ガチャ」で集客&ファンづくり

 

地域を巻き込み、誇りを生む
三位一体のブランド強化策

長崎県の西彼杵半島北部、三方を海に囲まれた西海市では、西海クリエイティブカンパニー(SCC)、西海市役所の里海推進課、4つの漁業共同組合で構成される西海市水産振興協議会の3者が共同で事業を行い、水産加工品の開発や営業支援などで漁業の価値の創出に取り組んでいる。民間企業・行政・漁協が連携するのは全国的にも珍しい例だ。

SCCが地域の未利用魚「アイゴ(バリ)」に着目し、新たな地域産品を作ったことをきっかけに、3者が手を組んだ。2023年には各漁協の特徴的な水産物を材料に、地元のフレンチシェフが監修した4タイプのコロッケが誕生。こちらも人気を博している。

プロジェクトを主導する浪方さんが最終的に目指すのは「西海の魚」のブランド化だ。

「そのためには、対外的なアピールよりもまず、地域の方々に魚や商品を知ってもらうことが肝心。水産関係者の足並みをそろえて、地域の皆さんに応援してもらえる仕組みをつくる必要があるんです」。地元住民が誇りに思えてこその名物であり、ブランドだからだ。

毎月最終土曜日に開催する「西海市土曜朝市」もその一環。なかでも「お魚ガチャ」は大人も子どもも引きつけるエンターテインメント性があり、リピーターを生み出す原動力となっている。こうして漁業を応援する関係者を増やし、西海市が一体となってブランド力を高めていくのだ。

人を呼び込むアイデア

アイゴの干物「BARI KUN」

ひれに毒がある、鮮度が落ちると臭みが出るなどの理由で流通せず捨てられていた「未利用魚」のアイゴ(バリ)も、適切に処理すればおいしく食べられる。上質な白身が味わえる干物として商品開発をしたことが話題を呼び、水産業の収益アップにつながった


フレンチシェフ監修、漁協のコロッケ

子どもからお年寄りまで愛される惣菜を目指してコロッケを開発。地元のフレンチシェフ、津本真砂幸さんが監修した。西彼町漁協の「うず潮カキ」、大瀬戸町漁協の「ゑべす蛸」、瀬川漁協の「スズキ」、西海大崎漁協の「マアジ」など特産品を使用している。


「お魚ガチャ」で集客&ファンづくり

地域を巻き込んだ魚イベント「西海市土曜朝市」は開場前から列をなす盛況ぶりで、遠方から2時間かけて訪れる方も。さまざまな企画を打ち出す中、旬の魚が当たるチャンスがある「お魚ガチャ」はエンタメ感満載で、これを目当てに来るリピーターも多数

PROFILE

浪方勇希さん

2017年に東京から長崎県西海市に移住し、株式会社西海クリエイティブカンパニーを創業。現在は地方創生に関する複数社の事業立ち上げや同社での新規事業開発を担当し、西海市の漁業の収益アップや水産業の活性化に取り組んでいる。
Instagram:@saikai4gyokyo


文:本多祐介

FISHERY JOURNAL vol.3(2025年冬号)より転載

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